約2年前に「訪問看護師がみた生と死、在宅無限大」を読みました。
すごい素敵な本だったので皆さんにも是非みてもらいたいです。
「在宅無限大」の意味を、本書の中で看護師が語る場面があります。
「在宅無限大。病棟なり(施設なり)管理下に置かれているんでは、制約がある。その違いです。」
個性や好みに合わせて、サポートすることができる。これが「在宅無限大」だと書いてあります。
本書では、訪問看護師には3つの側面があると書かれています。
①患者の快適さを実現する
②願いを叶える
③困難な状況へと応答する
今回はこの3つの側面から、ボクの体験談を踏まえて記事を書いていきます。
※ブログ内でのエピソードはフェイク入れたり、大幅に変更しています。
プロフィール
IT営業3年→看護師→フリーランス。
“ITで医療、介護業界の業務改善に貢献する”ためにシステム開発しています。
①患者の快適さを実現する
在宅医療では患者が主役
快適さを実現する上で思い出すエピソードがあります。ボクは看護師歴2年目から訪問看護をはじめて、最初に担当した糖尿病、腎不全末期のFさん。1人暮らしで、いわゆる「我がものすごく強い」方でした。
部屋に入るとびっくり。タバコ、カップラーメン、お酒、お菓子がたくさん。
当時私は病院に勤務しながら、訪問看護を休みの日にやるWワーク状態。
病院は「制約」が厳しい場所ですが、まさに「無限大」状態にびっくりした覚えがあります。
病院の看護師視点から考えると、Fさんは”ありえない”ことをしている状態ですよね。
血液データの結果もすこぶる悪く、透析後で体調悪そうな様子のFさん。
タバコの煙と匂いが充満する部屋でした会話を覚えています。
「病院はいやだね。自分の好きなことができないから。その分家はいいよ。タバコも吸えるし、酒も飲めるし。好きなことして死ぬのが一番だよ。はっはっは」
Fさんはこの生活を続けていたら、自分がどうなるか?それを分かっていました。
本書でも書かれていますが、
わがままは、「自分なりの生活背景とか、今までの信念」に由来する。(中略)わがままを尊重することは、1人ひとりの人生の厚みと個別性を尊重することでもある。
在宅は生活の場であり、その人らしさを実現する場所。
Fさんは自分のわがまま、つまり信念を通すために、自分の生きたいように生きる姿がとても印象的でした。
訪問看護師はあくまで生きるをサポートする役割なんだということをFさんは教えてくれました。
②願いを叶える
「家で過ごしたい理由」がある
訪問看護を利用する方の願いをたくさん聞いてきました。
また、「家で過ごしたい」理由も本当に人それぞれで、エピソードがたくさんありました。
・自分が会社員時代に猛烈に頑張って建てた家だから、最期まで住みたい
・病院は自分の好きなことができないから、家がいい
・孫と、娘と、ネコに囲まれて生活したい
・主人と過ごした思い出の家だから、私がこの家を守り抜きたい
なぜ?(why)を聞き、その人の大切な価値観をチームで共有するようにしていました。
本書の中で「終末期の自己決定とは死に方の選択ではなく、生き方のデザインである」と書かれています。
自分が最期までどう生きたいか?という生き方をデザインし、訪問看護師はその願いを叶える。
改めて素敵な職業ですね。
③困難な状況へと応答する
本書では、患者や家族にのしかかる重たい状況に対して、訪問看護師がどのように関わるのかを具体的エピソードと共にと書かれています。
ボクも、重たい状況に対して患者や家族の心が揺れ動く瞬間をたくさんみてきました。
・本人はずっと家にいたいと思っているが、家族は不安だから入院、または施設に入って欲しいと思っている
・老老介護で、もう面倒を見切れなくなって、疲弊している。けれども一緒に暮らしたい
・家で最期を迎えると決めたが、家族が不安でこのままでいいのかと思っている
ボクの体験で印象に残っているのは、自宅で繊維会社を営んでいた元社長のAさんのお話。
Aさんは「住み慣れた家で、最期まで暮らしたい」という希望と、奥様の「私は不安だから、施設に入れて欲しい」という気持ちでした。
「面倒を見切れません」と言いながらも、毎回忘れずにお薬を飲ませたり、食事介助をしたり、尿の破棄をしっかり行い、やさしい言葉をかける奥様。
在宅医、ケアマネ、ヘルパーさんと都度相談しながら、奥様の負担を減らすためにサービスの回数や訪問回数を増やしたりしながら介入していきました。
Aさんは意思表示が難しくなってからも「このまま家で最期を迎えことになりますが、いいですか?」という在宅医の問いかけに対しても、強く、強く頷きながら答えたのが印象的です。
最期を家で迎えた時、奥様の「本当にいろいろとありがとうございました。主人を家で看取ることができてよかったです」という言葉が印象的でした。
本人や家族の揺れ動く、困難な状況に対して、関わっていく訪問看護師。
最後に、本書で、訪問看護師が看取りについて語っている言葉を紹介します。
「家での看取りは、なんか自然。すごく自然です。家で看取るって決めて家に帰ってはるので、もうたしかにこう・・あんまり余分な栄養も入れないですし。要らない酸素やとか点滴もしないので。そういう面もあるかもしれないど、すごくこう・・自然ですね。」
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